■枯山水

佐世保で枯山水の庭を設計することになりました。ホテルの屋上庭園です。松を使ったシンプルですっきりとした日本庭園がクライアントから求められました。その要望を聞いたときに最初にイメージしたのが枯山水の庭です。本来、日本庭園とは石や水、樹木などの自然の素材を用いて様々な風景を表現したものです。その様式は様々ですが、枯山水の庭は室町時代に最も栄えたとされています。流れがあった庭の水が枯れてしまったがその趣がよかったことから始まったといわれています。禅寺に多く作られ、狭い空間に石や白砂等で風景を表現したり、時には禅の思想を表現したり、日本庭園のなかでは最も芸術性の高いものとされています。また、枯山水の庭園はそのテイストにより真、行、草に分けられます。書道でいうところの楷書、行書、草書と同じです。そして、そのテイストによって使用する石の量も異なります。真の代表の大仙院と草の代表の龍安寺を比べるとよくわかります。今回の現場は屋上庭園で、かけられる荷重にも限界があり、高木植栽は梁の上しかできません。これらの制約をクリアーする日本庭園として、「草の枯山水」の庭を造ることにしました。テーマは「山から海に至る水の流れ」です。

■枯山水をVRで表現する

敷地は山を背景にし、目立つ建物は2軒しかありません。建物を隠すことは不可能ですが、一定の視線で目立たなくさせることは可能です。庭全体のイメージをクライアントに説明するとともに施工する職人さんと共通のイメージを持つために、また、借景や建物との関係をシミュレーションするためにVRを制作しました。山を借景に取り入れながら、景石や黒松を一本一本植えていきました。建物への視線は中木や低木の大刈り込みで目立たなくさせました。低木はアンジュレ-ションをつけるために、大きさを変えて一本一本丁寧に植えていきます。VRとは言え、黒松の向きを調整したり、景石のバランスをとったり、中木や低木を一本一本植えていったりとまさに現場で施工しているような感覚で作っていきます。この作業でリアリティが変わります。結果は、クライアント、職人さんの両方に大変喜んでいただきました。



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