■VRでソフトランドスケープを表現する

ランドスケープの要素は大きく分けるとハードランドスケープとソフトランドスケープに分けられます。ハードは主に建築や土木の分野で作られる構造物、ソフトは植物や動物、水などの自然素材が主な要素となります。これらに時間の経過や社会的な要因等が加わり景観を形成します。造園とは基本的にソフトランドスケープを指し、一般的に、ランドスケープアーキテクトとはこのソフトランドスケープの専門家をさします。

ソフトランドスケープの設計において、美しい庭や街の風景を作ることは、一枚の美しい絵を作ることと同じです。視点を設定し、対象を絵のように描いていきます。絵画との違いは、絵を描く材料が複雑で、植物、動物の生態、土壌、社会学等多岐にわたることです。すなわち、ランドスケープアーキテクトには美しい風景をつくる芸術的な感性と多くの科学的な知識が必要なのです。まさに「芸術と科学」の分野を必要とする職能です。しかし、この職業は一般にはほとんど知られていません。環境問題がますます深刻になり、土木、建築、都市計画等の様々な分野で自然との共生が求められている今こそ、この職能が必要なはずなのですが、世間にはあまり浸透していません。何故でしょうか。

美しい日本の風景が次々に消えていくのはなぜでしょうか。我が国は何故、ドイツをはじめとするヨーロッパ諸国のように美しい風景を守れないのでしょうか。その原因は2つあると考えます。一つは日本人のパブリックに対する意識が低いこと。もう一つは、我が国のランドスケープアーキテクトのような景観のプロの活躍が少ないことです。ランドスケープアーキテクトは我が国では絶滅危惧種ともいわれており、生き残るためには、自らの職能の必要性を広く一般にアピールしていかなければなりません。むしろ、我々が活躍しないと日本の美しい風景は残らないという意気込みが必要なのかもしれません。

我々の職能を一般にアピールするためには、美しい風景づくりに貢献する多くの作品を地道に作り出していくことが必要です。しかし、ランドスケープデザインの本質は地域になじんだ美しい風景ですので、いい作品ほど、一般の人に心地よさを感じさせますが、デザインされているということは感じさせません。これもまたランドスケープアーキテクトが一般に浸透しない理由の一つでもあります。

そこで、イークラフトはランドスケープをもっと世間に浸透させるためにも、VRでソフトランドスケープを表現したいと考えています。その表現方法は、リアルな表現、味のある表現、時間の表現、地中の表現等様々ですが、未だ確立されていません。「見えないものを見せる」VR技術を用いて、風景はソフトランドスケープのデザインによって変わるということを強くアピールし、ランドスケープアーキテクトの地位向上とランドスケープ業務の増加に貢献したいと考えています。

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